大青面金剛が見せた心の火

本当はずっと、救いたかった。
本日もお目通し下さり光栄です。神の御手代　西陣の拝み屋えみこです。
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明日2/12はしし座の満月。この満月はあなたの世界について、問う満月になりそうです。そんな本日、午後から火渡修行を体験して参りました。ここ数年毎年お声かけ頂いておりましたが、昨年は法事と重なり、その前は仕事と重なって三年目にしてようやく伺えた庚申堂さんの星祭。行ってみて思ったのは、やっぱり修験の世界に対するある種の憧れが自分にはあるし、お経とか外護摩の中にいるのが心地よかった、ということ。大青面金剛明王にはここ数年ご縁があって、例えば一昨年は青蓮院で満月護摩祈祷を、昨年は通年で八阪庚申堂で護摩祈祷を受けておりました。その甲斐あってか、ようやく伏見庚申堂さんの星祭りに伺えたのかも知れません。1時間強の祭事の間、幾度となく身体の奥から言葉が上がってきて、本当に久しぶりに半泣きになりながら儀式に参加しておりました。

〇本当はずっと、救いたかった〇

「救いたいんです」
これは、新人のころのわたしが研修で口にして、散々師匠から叱られてきた台詞。臼井靈氣の世界で、この言葉を口にしては叱られ、それでも泣くほど人を救うことがしたかった。そんな時間を、かれこれ8年くらい過ごしてきました。その言葉を口にしなくなったのは、東日本が起きたあとから。きっかけになったのは、人間の浅ましさ。「救うに値しない」という世界を見せつけられる時間を体験したことがきっかけ。まぁ、本当に、どれほど人間が浅ましいのかをよく見せられたものだと思います。命を狙うもの、お金を盗むもの、人を襲うもの、そして保身のための人の命を差し出そうとするもの。欺くもの、装うもの、本当にいろいろな人に嫌というほど出会ってきました。そのうちに「救いたいんです」という言葉の代わりに、こんなことを言うようになりました。

この世に救わなくていい人はいない。
しかし「わたしが救わなくてもいい人」は、確実に存在する。

〇仏が告げた心の奥底の聲〇

星祭りで山伏の装束を纏ったお坊様達は、お経を唱え火を焚きます。その火と読経の中でふいに涙と共にこんな聲が身体の震えの中から這い上がってきました。
「救いたかった」
あぁ、そうだね、わたしは救いたかった。救いたい、救いたい、そう言いながら靈氣をやっていたんだよ。そう思ったら、なんだか泣きたくなって、必死に涙を堪えながら両の手を合せ、その指先と身体の震えに乗るように何かが身体から流れ出ていくのを感じていました。目を閉じ、読経を聴いて、その中で本尊の大青面金剛と話をする。読経が終わる間際、ふいに仏様が申されました。
「お前を救い、人を救えば良いだろう」

わたしが救うに値しない人は、確かに存在する。けれど、わたしにしかできないであろうことも、確実に存在する。何より、人が苦しんでいるのを見過ごすことはやっぱりできない。目の前で燃えさかる火の中を渡っていくお坊様。「皆さんにこれと同じことをしなさいとは言いません。いま渡れるようにしますから」と、外護摩の火を調整してくれるお坊様方。参加者の列の最後の方にそこを渡ったわたしが通った護摩の火種は、驚くほど冷たくて、あぁこれが行を行っているものとそうでないものとの差なんだな、と、しみじみ思いました。行者に守られ、行者に支えられ、行を行う。それでも、そんな自分の心の奥底には20年前からくすぶっている「救いたい」という想いの火が消えなかった。ふと、かつて新人のころ勇気を貰っていたこのCMを思い出しました。
靈氣伝授が出来なくなっても、いや、靈氣伝授を取り上げられてしまったからこそ、わたしは、自分の胸の奥に今でも眠っているこの火を思い出せたのかもしれない。
「救いたいんです」
これは、わたしの、大切な心の火。わたしの世界のトーチなのかもしれません。

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